目的
慢性腎臓病(CKD)は年々患者数が増えており,国の施策として「腎疾患対策検討会」において我が国における腎疾患対策のあり方について検討し、「腎機能異常の重症化を防止し、慢性腎不全による透析導入への進行を阻止すること」、及び「慢性腎臓病(CKD) に伴う循環器系疾患(脳血管疾患、心筋梗塞等)の発症を抑制すること」を目標として 腎疾患対策の方向性が示されている.
今回慢性腎臓病モデルとして利用されているアデニンを混餌で投与することによりCKDモデルを作製した.
方法
ラット,Wistar系,雄
7週齢
正常粉末飼料(CE-2),アデニン0.25%含有粉末飼料
各群6例
ラットに正常粉末飼料を与える群とアデニンを0.25%混ぜ合わせた粉末飼料を与える群に分けた.粉末飼料は28日間与え,採血はアデニン投与開始前,その後1週間ごとに4回無麻酔下で鎖骨下静脈より実施した.血液は遠心分離後血漿(ヘパリン)を採取し,BUN,Creを経時的に測定した.28日間アデニン食を与えた後,ラットはイソフルラン麻酔下で放血致死を行った後,左右腎臓の重量を測定した.
結果
一般状態は特に異常は認められなかったが,アデニン投与開始後2週目ではアデニン食群の床敷きの汚れが目立ち,尿量が増加している様子が伺われ,その傾向は4週目まで続き,腎障害のパラメータの一つである尿量増加が観察された.
体重は毎週測定した結果,アデニン投与開始後2週目から通常食群と比較してアデニン食群は有意な低値を示した.
生化学的検査(BUN,クレアチニン(Cre))ではBUNはアデニン混餌投与開始1週目より有意に上昇し始め,Creは開始3週目より有意に上昇した.
腎臓は通常食と比較してアデニン食の方が大きく腫大していた,腎重量を左右別に測定し,それぞれの重量及び合計重量を図示した.左右及び合計重量とも有意に重く,腎臓が腫大していることが示されている.
まとめ
慢性腎臓病(CKD)モデルとして,アデニン誘発CKDモデルの作製を行った.ラットの実験ではアデニンの濃度は0.75%が使われることも多いが,0.75%だと体重がアデニン投与開始時よりも減少してしまい,一般状態にも影響が出ると言われている.そのため,体重がアデニン投与開始時よりも減少しないという0.25%を選択し,実験に供した.
その結果,体重は正常食と比較し,有意に軽いものの増加した.一般状態には特に異常は認められなかったが,床敷きの汚れから尿量が増加していること認められた.
生化学検査値ではBUNの有意な上昇(投与開始後1週目)が先行し,その後クレアチニンが上昇(投与開始後3週目)する結果が認められた.このクレアチニンの3週後の上昇が急激であることから,実験により2週目から有意な反応が出る場合もあると思われるが,治療効果等に使用する場合はアデニン投与開始後3週目のクレアチニンの上昇を確認してから実施するのが確実だと思われる.また,BUNの先行した増加はアデニンに含まれる窒素により腎障害よりも食餌性の可能性もあることから,腎障害に関してはBUN,Cre両パラメーターの増加を指標にする方が良いと思われる.
また,腎障害が発生すると尿量が増加し,この変化はBUN,クレアチニンの増加に先行すると言われている.今回,尿量は測定していないが,床敷きの汚れから尿量が増加していることは確実であるため,尿量を測定することも意義があると思われる.
以上のことから,アデニン誘発CKDモデルは0.25%で有意な病態を示すことが認められた.アデニン誘発CKDでは投与開始時期を変えることにより,予防及び治療の両効果を確認することが出来るCKDモデルとして利用可能である.
自社開発技術の紹介
小動物
慢性腎不全モデルラットの作製
-腎動脈分枝結紮法-
マウスを用いた耐糖能試験
-OGTT-
坐骨神経切除による腓腹筋,
ヒラメ筋,足底筋に対する影響
慢性腎不全モデルラットの作製
-アデニン誘発慢性腎不全モデル-
デキストラン硫酸ナトリウム誘発
潰瘍性大腸炎モデルの作製
マウスの無麻酔経時採血方法の検討
‐頚静脈(鎖骨下静脈)‐
経口脂質負荷試験(OLTT)を用いて
新規肥満・糖尿病マウス作製法を用いた
肥満・糖尿病予防効果(特許出願中)
新規肥満・糖尿病マウスの作製(特許出願中)
慢性腎不全モデルマウスの作製
‐アデニン誘発慢性腎不全モデル(1)‐
慢性腎不全モデルマウスの作製
‐アデニン誘発慢性腎不全モデル(2)‐
大動物
低用量STZ誘発性糖尿病
モデルブタの作製