目的
慢性腎臓病(CKD)は年々患者数が増えており,国の施策として「腎疾患対策検討会」において我が国における腎疾患対策のあり方について検討し、「腎機能異常の重症化を防止し、慢性腎不全による透析導入への進行を阻止すること」、及び「慢性腎臓病(CKD) に伴う循環器系疾患(脳血管疾患、心筋梗塞等)の発症を抑制すること」を目標として腎疾患対策の方向性が示されている.
慢性腎臓病モデルとして5/6腎摘,抗Thy-1抗体投与による腎炎モデル,糖尿病性腎症モデル等があるが,いずれも病態が強すぎる,発現までに時間が掛かるなどの問題点がある.そこで,今回腎動脈の中枢側の分枝を結紮することによる腎疾患モデルの作製を試みた.
方法
ラット,Lwis,雄(3群, 各3例)
10週齢(腎動脈結紮時)
ラットをイソフルランで麻酔し,左腎動脈の中枢側分枝を5-0絹糸で結紮した.その1週間後に右腎を摘出する群(1K群)と右腎を摘出しない群(2K群)を設けた.また,左腎動脈の露出及び右腎動脈の露出までを行ったSham群を設けた.
左腎動脈結紮を0週間とし,第1週に右腎動脈を摘出した.測定項目として血清学的検査ではBUN,クレアチニン,シスタチンC,尿検査として尿量及びUPCを経時的に測定した.
結果
生化学的検査(BUN,クレアチニン(Cre),シスタチンC (Cys C))では右腎臓摘出後1週目(第2週)よりいずれも有意な高値を示し,第6週まで安定して高値を示している(図1).
図1 BUN,Cre,Cys C
尿量は1K群が多尿傾向を示し,第6週でSham群及び2K群と比較して有意であった.また,UPCは1K群が高い傾向を示したが,有意差は認められなかった.(図2).
図2 尿量及びUPC
腎不全が発症しているが,これらの動物は一般状態に異常は認められず,体重にも差は認められなかった(図3).
図3 体重
まとめ
慢性腎臓病(CKD)モデルとして,腎動脈分枝結紮モデルの作製を実施した.その結果,腎動脈分枝結紮動物の正常腎を摘出後1週間で腎疾患を生じ,その血清マーカーから少なくとも4週間はその症状は安定していることが示された.また,一般状態に異常は認められず,体重の減少も認められないことから発症した腎不全は重症化していないと考えられる.
このことから,腎動脈分枝結紮モデルは発現が早く,更に安定した病態モデルである.本モデルはCKDに対する治療効果を求めるのに最適なモデルであると考えられる.
自社開発技術の紹介
小動物
慢性腎不全モデルラットの作製
-腎動脈分枝結紮法-
マウスを用いた耐糖能試験
-OGTT-
坐骨神経切除による腓腹筋,
ヒラメ筋,足底筋に対する影響
慢性腎不全モデルラットの作製
-アデニン誘発慢性腎不全モデル-
デキストラン硫酸ナトリウム誘発
潰瘍性大腸炎モデルの作製
マウスの無麻酔経時採血方法の検討
‐頚静脈(鎖骨下静脈)‐
経口脂質負荷試験(OLTT)を用いて
新規肥満・糖尿病マウス作製法を用いた
肥満・糖尿病予防効果(特許出願中)
新規肥満・糖尿病マウスの作製(特許出願中)
慢性腎不全モデルマウスの作製
‐アデニン誘発慢性腎不全モデル(1)‐
慢性腎不全モデルマウスの作製
‐アデニン誘発慢性腎不全モデル(2)‐
大動物
低用量STZ誘発性糖尿病
モデルブタの作製
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